
その土曜日、7時58分 / Before The Devil Knows You’re Dead (2007年, アメリカ)
監督:シドニー・ルメット
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン, イーサン・ホーク, マリサ・トメイ, アルバート・フィニー, 他
公式サイト:http://www.so-net.ne.jp/movie/sonypictures/homevideo/sonodoyoubi/
先日のデ・パルマやロメロに続いての巨匠のお出ましであります。こういう軸のしっかりした方々は、薄っぺらい小手先な作品なんて作りませんね。なんとまぁ懐の広い映画でしょう、というのが第一印象。
そして俳優陣の素晴らしい仕事。フィリップ・シーモア・ホフマンの人格崩壊っぷり、イーサン・ホークのダメ次男っぷり、アルバート・フィニーの実は一番怖い人っぷり、どれも見事な演技で俳優目当てで観ても納得できそうな大充実作です。
邦題のインパクトの無さでちょっと損してるけど、これは文句なしにお薦めの一本です。
ニューヨーク郊外にある小さな宝石店に強盗が押し入る。隙を見て女性店員が強盗を撃つが、彼女もまた銃弾を浴びる。慌てて逃げる共犯者ハンクの車…。強盗3日前、ハンク(イーサン・ホーク)は兄のアンディ(フィリップ・シーモア・ホフマン)から両親が経営する宝石店への強盗計画を持ちかけられる。ハンクは養育費の支払いが滞り、お金に困っていた。一見、贅沢な暮らしを送るアンディもまた、ドラッグに溺れて会社の金に手を出していた。やがて二人は強盗が失敗しただけでなく、撃たれたのが自分たちの母親だと知り愕然とする。というお話。
失敗するはずのない小さな犯罪が、ちょっとしたミスをきっかけにとんでもない方向に転がっていくという、サスペンススリラーものではよくあるタイプのお話ですね。コーエン兄弟の『ファーゴ』とか。犯罪を企てる奴のダメっぷりも良く似ています。
それでも、時間軸を操ったストーリーテリングの巧みさと畳み掛けるような怒濤の展開には胸ぐら摑まれっぱなしです。説明的な表現は一切なく、過去と現在を行き交いながらシーンを重ねるにつれて、いろんな出来事の意味合いがどんどん変化してくる。登場人物に対する印象がどんどん変化してくる。本当に良く出来た脚本です。サスペンススリラーとしては荒い部分もなきにしもあらずなんだけど、語り口の上手さで帳消しにできるくらい。
もちろん普通に観てても全然面白いんだけど、深読みすればする程さらに面白くなってくるというのも本作の特徴でしょう。例えば、アンディは母親が犠牲になる事を少なからず狙っていたんじゃないかとか、父親のチャールズは若い時に裏稼業に手を染めてたんじゃないかとかね。前者は父親への復讐的な意味で、後者は演出からもそういう臭いが漂ってます。そんな想像の余地が残っている所も優れた作品の証でしょう。
但し、ストーリー的にはかなりやりきれないものなので、後味の悪さを嫌う方には向かないかもしれません。昨今の親殺しや子殺しといった話題が苦手な方は特に。
原題の”Before The Devil Knows You’re Dead”(悪魔があなたの死に気付く前に)も謎とインパクトを備えた良いタイトルですね。何故このまま邦題にしなかったのかってくらい。ポスターのアートワークもオリジナルの方が全然カッコイイのになぁ。
しかしシドニー・ルメット、御年83歳にして志高いですな。今時のアメリカで、こんなにも映画らしい映画を良く撮れたもんだなぁと感心してしまいます。
それではトレーラー(英語版)をどうぞ。
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