3人の超個性派監督のコラボレーションが実現『TOKYO!』

TOKYO! (2008年, フランス=日本=韓国=ドイツ)
監督・脚本:ミシェル・ゴンドリー, レオス・カラックス, ポン・ジュノ
出演:藤谷文子, 加瀬亮, ドゥニ・ラヴァン, ジャン=フランソワ・バルメ, 香川照之, 蒼井優, 他
公式サイト:http://www.tokyo-movie.jp/
よくもこんな企画が実現したなってくらいの無謀過ぎるオムニバス作品です。こんなクセ者監督3人の作品を1本にまとめるなんて、想像を絶する苦労があったに違いありません。
自分は短編のオムニバス作品って、個々のエピソードの印象が薄くなるのであまり好きじゃないのですが、本作は1エピソードが30分以上という事もあり見応え十分でした。オムニバス作品の傑作、ケン・ローチ, アッバス・キアロスタミ, エルマンノ・オルミによる「明日へのチケット」同様の完成度で、東京という場に暮らす人々を三者三様の個性で描いています。
駆け出しの映画監督アキラと共に上京してきたヒロコ。部屋探し、就職…、物事が上手くいかない中で、ヒロコは自分の居場所が次第になくなっていくのを感じる。(「インテリア・デザイン」) 東京の下水道から出没する謎の怪人「メルド」。人々が恐れる中、ついに大きな事件が起こり…。(「メルド」) 10年間引きこもりの生活を続けている一人の男。ある日、配達に来た美しい少女と目が合い…。(「シェイキング東京」) という東京を舞台にした3編です。
「インテリア・デザイン」という謎なタイトルのエピソードは、奇才ミシェル・ゴンドリーの作品。これのどこが彼の作品なの?と嫌な予感がしてたんだけど、終盤で堰を切ったかのようにゴンドリーワールドが押し寄せてきます。
日常から非日常に転落していく瞬間は、例のゴンドリーマジックといいますか、何か薄皮が剝けるかのように「ぺろん」と別世界に入れ替わってしまいます。この「ん?あれれ?ぎゃーーー」な瞬間を体験する事が彼の作品の存在理由だと思っているのですが、本作でも存分に味わうことができますよ。
「メルド」はお久しぶりのレオス・カラックス作品。意外にも爆音や血しぶきが飛び交ってます。相変わらず暗い画作りだなぁ。
ドゥニ・ラヴァン演じる主人公の名前「メルド」はフランス語で「糞」という意味。小綺麗な東京の街に現れた異物(糞)に対する日本人の不寛容さを描いた作品です。ちっぽけな異物の出現により、東京中が大パニックに陥ってしまうという皮肉に満ちてて、カラックスの底意地の悪さが際立っていますね。渋谷や銀座の地下には、戦時中の武器が眠るモノ凄い洞窟があったりするのも、表面だけ取り繕った東京を揶揄しているようで面白い。
「シェイキング東京」は、個人的に今回一番楽しめたエピソードです。大好きな香川照之と蒼井優が出演してるってのもありますが、「グエムル 漢江の怪物」というトホホ作品(観てないけどイメージで)の監督がこんな凄いモノ作るのか!という驚きが大きかった。
香川のねっとり感や蒼井の透明感を過剰に引き出しつつ、静と動をこれ程のコントラストで描く才能はタダモノではありません。普通ならアニメで作りそうな不条理漫画を実写で作ったかのような、非常に不思議な映像体験でした。とりあえず、彼の監督作はチェックしないとマズそうだぞと。
3エピソードに共通しているのは、東京に暮らす人間の他者との距離感を描いているという点です。こんなに人口が密集している場所なのに、人々の心はどんどん離れていく。そんな特異な場所で繰り広げられる様々な人間模様を個性豊かに描き出しています。
外国人が描く日本がテーマの作品は数多くありますが、そんな中でも本作はひときわ輝く良作でしょう。企画の派手さに惑わされず、是非観てもらいたい一本です。最後にトレーラーをどうぞ。
【AD】

テクノロジーが大好物のロードバイク乗りが、気になるモノやコトを紹介するブログです。自転車関連の話題はもちろん、ガジェットやネットサービスをはじめ音楽や映画等々、ノンジャンルのようで実に筋の通った話題をピックアップします。
