フレンチアニメの金字塔『ベルヴィル・ランデブー』
ベルヴィル・ランデブー / LES TRIPLETTES DE BELLEVILLE (2002年, フランス)
監督・脚本:シルヴァン・ショメ
音楽:ブノワ・シャレスト
美術:エフゲニ・トモフ
公式サイト:http://www.klockworx.com/belleville/
ツール・ド・フランス期間中にもう一度見たいと思った映画は『オーバーカミング』ともうひとつ、このアニメ映画『ベルヴィル・ランデブー』です。劇場公開時に一度観て、DVD発売時に購入したまま放置していたエディシオン・コレクトール(初回限定版)の2枚組DVD。購入後3年経ってやっと開封しました。
以下ネタバレ的な内容も含みますが、その程度では本作の魅力は全く失われませんので安心してお読みください。
孤独な少年シャンピオンは、祖母のスーザが与えてくれたピアノやおもちゃに興味が持てずにいた。ある日、スーザが贈った三輪車がシャンピオンの人生を変える。時が過ぎ、トレーニングを積んだシャンピオンは、世界最高峰の自転車競技、ツール・ド・フランスに参加することに。ところが、シャンピオンと他2名の選手がレースの途中に何者かに誘拐されてしまう。スーザは愛犬ブルーノを連れ、シャンピオンを乗せた船を追って太平洋を超え、ベルヴィルの街にたどり着くが…。というお話。
本作を特徴付けているのが極端にカリカチュア(デフォルメ)されたキャラクター。日本製アニメの当たり障りのないビジュアルに慣らされた人には、どのキャラもグロく見えてしまう程の異形っぷりです。セリフはほとんどなく、ビジュアルですべてを語り尽くしている点も徹底していますね。一目で性格や役柄が判るキャラクターと相まり、セリフなんかなくても物語の世界が頭の中にスンナリと入り込んできます。
そして意表を突く脚本。シャンピオンがツール・ド・フランスで活躍するヒーロー物語なのかと思ったら、山岳ステージであっけなくリタイアしてしまうという、えぇーーーな展開。そこから物語が大きく展開し、マフィア達の思いもよらない陰謀に巻き込まれていくのですが、それが常人には考えつかないトホホな計画なんですね。なんじゃそりゃ!と突っ込みたくなるような。
実はシャンピオンは脇役だったんですね。原題はベルヴィルの三つ子という事で、脇役かと思われた三つ子が主役だったという事にも驚かされます。
セリフのない作品ということで、SEと音楽がこれまた素晴らしい出来です。床を滑るブルーノのツメの音やホイールの振れ取りの音、体重計の立てる音等々、地味ながら非常に良く作り込まれたSEは、作品のリアリティに厚みをもたらしています。そしてサウンド面での真骨頂は三つ子とスーザによる掃除機のショー。この前衛的過ぎる演奏は、耳の肥えた音楽ファンをも唸らせる驚くべきパフォーマンスです。本作の音楽性の豊かさを象徴するシーンでしょう。
DVDにはショメ監督のインタビューが収録されているのですが、これもなかなか興味深く見る事が出来ました。
特に、「子供向け作品を作る予定は?」という問いに対して「すでにそうしてる」と応えた件。子供に対して過保護過ぎるのは問題ではないか。子供には何でも見せて自分で判断させるべき。という言葉には大きく頷かされます。
本作はジブリCINEMAライブラリーの1作という事のようですが、そのジブリの「子供向け」最新作を観てショメ監督は何と言うのか興味ありますね。高畑勲との対談で宮崎作品の素晴らしさを語るショメ監督が、あの粗悪な作品をどう見るのか。
そして、インタビューでも触れられている敗者に対するフランス人の眼差しの優しさという話も印象的です。DVDにも収録されている前作『老婦人とハト』もそうだし、オムニバス映画『パリ・ジュテーム』に収められた短編でも一貫してヒーロー信奉とは逆の精神を貫いています。万年2位ながらフランス人に愛された自転車選手プリドールの例も素敵でした。
まだ観ていない方にはレンタルでもいいので是非試してもらいたい作品ですね。日本のアニメこそが世界一と信じて疑わない人には特に。では、トレーラーをどうぞ。
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