耳は痛いが心地良い『ぐるりのこと。』


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ぐるりのこと。(2008年, 日本)
原作・脚本・編集・監督:橋口亮輔
出演:木村多江, リリー・フランキー, 倍賞美津子, 寺島進, 安藤玉恵, 他
公式サイト:http://www.gururinokoto.jp/

自分は寂しさとか孤独といった感情が欠落した人間なんだと思っていますが、たまにこういう作品に接するとそうでもないかもという気持ちにさせられます。ずいぶん昔に忘れてしまっていたものがふと蘇ってくる。

橋口亮輔の6年ぶりの新作は、希望というものは結局他者とのつながりの中からしか得ることはできないという事を改めて気付かされる良作であります。

小さな出版社で女性編集者としてバリバリと働く妻・翔子(木村多江)と、法廷画家の仕事に戸惑いながらも記者として働く、頼りない夫・カナオ(リリー・フランキー)。そんな2人に、小さな命が宿る。そして翔子は、カナオと共に子を授かった幸せを噛みしめていた。だが、そんなどこにでもいる夫婦を、突然の悲劇が襲った…。初めての子供の死をきっかけに翔子は、精神的に追い詰められ、鬱に陥ってしまう。だが、そんな翔子をカナオは全身で受け止める。2人は、困難に直面しながらも“夫婦の絆”で、壁を乗り越えていく…。というお話。

まず、木村多江とリリー・フランキーというフレッシュなキャスティングが素晴らしいですね。鬱を演じる木村多江の熱演と、リリー・フランキーの穏やかで確かな包容力。ひょうひょうと生きながらもゆるぎない芯を持つリリー氏がカッコ良すぎる。

もう一つは、この夫婦の10年と平行して描かれる社会背景が無理なく物語の一部として描かれている点にも注目したいですね。法廷画家の夫カナオが職場で見る幾多の裁判シーンが、当時の気の滅入るような社会背景を丹念に描き出します。汚職, 幼児虐待, 猟奇殺人, カルト教団によるテロ行為等々。バブル崩壊以降の変質してしまった日本を一つ一つ検証するような作業は、翔子の鬱の発症と相まって作品を奥行きのあるものにしています。

そういった重々しい雰囲気の前半と打って変わり、映像にも色彩を取り戻した後半では夫婦が再生していく様子が描かれていく。これも、苦しい時間を乗り越えたご褒美のように輝いています。

寺田農演じる吉住の口癖の通り世の中「面倒くさい」事だらけなんだけど、そんな面倒くさい事から逃げ続けてると結局幸せにもなれないんだよ、というメッセージのように聞こえて耳が痛過ぎる作品でありました。でもそんなのもたまには悪くない。親の説教を聞くように賞味させていただきました。

もう何日他人と会話していないかなぁ。いかんなぁ。という事でトレーラーをどうぞ。


 

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