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ツールに備えてお勉強『北京五輪もヤバイ!? ドーピング毒本』

先日、ツール・ド・フランスのドーピング絡みのニュースが報じられました。一昨年の覇者ランディスのタイトル剥奪と2年間の出場停止、去年マイヨ・ジョーヌを着たままツールを追われたラスムッセンの2年間の出場停止。ランディスについては2年に渡り争ってきましたが、これで処分が確定した事になります。

そして、少し前にはあのボーネンまでもコカイン使用発覚でツール出場を取り止めるというショッキングな報道も駆けめぐりました。

そんなこんなで、近年のツール・ド・フランスはドーピングスキャンダルにまみれている訳ですが、観る側にも正しい知識が求められるご時世になってまいりました。という事で本書でお勉強。

品のない当て字のタイトルは好きになれないけど、薬物を使用するユーザとそれを取り締まるコントローラの両者の言い分がバランス良くまとまっている、なかなかの良書であります。

目次

はじめに 現代スポーツはドーピングを抜きには語れない
File01 ドーピングはスポーツが生んだ鬼子だ! 増田晶文
File02 ドーピングに手を染めた五輪アスリートたち 鈴木ユーリ
File03 【インタビュー】二宮清純 ドーピングはスポーツの歴史と共に歩んできた
File04 プロ選手はドーピングへの誘惑とどう対峙していけるか 抜井規泰
File05 衝撃の「ミッチェル・リポート」を掘り下げる 富沢高行
File06 薬物への認識が甘い「日本野球機構(NPB)」 飯山満
File07 格闘技の世界では薬物はもはや「常識」なのか 岩崎大輔
File08 ディープインパクト薬物失格から考えるニッポン競馬の死 大月隆寛
File09 愛甲猛の告白 私はどうしてステロイドに手を出したか 小川隆行
File10 【インタビュー】河野一郎 ドーピングの争点
File11 【インタビュー】JADA浅川伸&田辺陽子 アンチドーピングという名の戦い
File12 ダイエットのための(禁)ドーピングメソッド 薬理凶室くられ
File13 わがドーピング体験記 吉田武

これまでは、使えば必ず摘発されるのに何で薬物を使うの?という素朴な疑問から脱することができず、ドーピング問題が起きる度に疑念と失望感の混じる何とも言えない気分にさせられていました。結局何が原因で誰が悪いのかがはっきりしないからなのですが、これを読んで多少はスッキリさせることができました。

自分の理解では、現在の過度に商業化されたスポーツが構造的に抱える問題であり、何年経っても結局はイタチごっこであるという悲しい結論ですね。こう割り切る事ができれば、事件が起きた際にも多少は冷静に対処できる。...かな?

アスリートがドーピングに走る動機は様々ですが、例えばこんなケース。

自分は年齢的にも今年が最後のチャンスだろう。この大会のために全てを投げ打ち多大な犠牲を払ってきた。メディアからも優勝候補として大きく扱われ、スポンサーやチームからの期待も膨れあがっている。本大会を最後に引退も考えている。ところが、予定外の負傷により計画が大きく狂い始めた。こんな状態で優勝できる確率は万に一つもない。苦痛でボロボロになった体と心が、目の前にちらつく誘惑に吸い寄せられる...。

去年のヴィノクロフの状況を想像してみたのですが、きっと当たらずとも遠からずでしょう。そんな彼に罵声を浴びせる事は自分はできないなぁ。もちろんドーピング違反を許容するつもりはないけど、選手だけを「裏切り者」扱いする行為はあまりにも幼稚過ぎるというもの。

スポーツジャーナリスト二宮清純氏はこう言っています。

だからそれは原理的に観客が持つ性格、性質なんです。もっと本当のことを言えば、ドーピングしていようが何をしていようが、200メートル飛ばすすごいホームランを見せてくれたら、スタジアムに客は来ますよ。ドーピングをやっても100m9秒5で走ったら、現実には皆喜ぶでしょう。人間てそういう存在なんですよ。そういった欲望があるからこそ、選手も手を出す。これは見事に需要と供給が一致しています。

確かに、2006年ツールのランディスの超人的な逆転劇に興奮しなかった人はいないでしょう。後にあの驚異的なパフォーマンスはステロイドの力を借りていた事が発覚する訳ですが...。

そんな状況の中で我々ができるのは、リザルトには表れない活躍をもって選手を評価するという態度に尽きるのではないでしょうか。例えば、2006年ジロで初勝利を目前にしながらも、前を引き続けたガラーテに勝ちを譲ったフォイクトの男気はその最たるものでしょう。そんな記憶に残るパフォーマンスは、しっかりと観戦していれば随所に見ることができるはずです。

二宮氏のインタビューからもう一つ引用。将来的にクローン技術でアスリートを複製することが出来た場合に、社会はそれを許すのかという問いに対して。

でも人類が倫理的に、そして理性的に物事を選んだことって、これまでないでしょう(笑)。科学技術のほうが先行していれば倫理の壁なんかいとも簡単に飛び越えていくことは、人類の歴史が証明していますよ。人間に倫理観があれば原子爆弾は投下しませんよ。まあつくるかつくらないかは別ですけど、例えばNBAに人気がなくなって、マイケル・ジョーダンを再びNBAにほしいとなれば、必ずそういう発想は出てきます。

北京五輪では薬物によるドーピングは影を潜め、遺伝子操作によるドーピングが表舞台に現れてくるといわれています。近い将来にはクローン技術を使った空恐ろしいものも出てくるのでしょう。そうなってきた時に、副作用とか罰則とか倫理とかいった抑止力はどれだけ力を保つことが出来るのか。

タイミング良く、ナショナルジオグラフィックチャンネルで『世界最強の男 第1話 ステロイド』という番組が放映されています。ランディスの映像が頻繁に挿入され心が痛みますが、ステロイドの知識を得るには非常に良い番組です。次回の再放送は7/5 8:00- なので、見ることが出来る方は是非どうぞ。

 

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日時: 2008年07月03日(木) 21:35

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