
オーバーカミング / OVERCOMING (2005年, オランダ)
監督:トーマス・ギスラソン
出演:ビャルネ・リース, イヴァン・バッソ, カルロス・サストレ, ミケーレ・バルトリ, 他
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/tour/
日本では2006年に公開された本作は、サイクルロードレースの記録映像の中では最も見応えのあるものの一つでしょう。2004年のツール・ド・フランスの期間中、名将ビャルネ・リース率いるチームCSCに密着し、選手やチームの実情をカメラに収めた作品です。
DVDが発売された時に一度観ていたのですが、今年のツールでの同チームの活躍ぶりを目の当たりにし、もう一度観たくなり再度鑑賞。CSCは当時から名門チームではあったのですが、今大会のような大成功を収めるまでの成長を遂げる秘密を克明に捉えた非常に興味深い作品です。
2004年大会といえばアームストロングの6連覇がかかった大会で、近代ツールの中でもとりわけドラマチックな展開をみせたことで有名な年です。そんな中で新加入のバッソがアームストロングを下して区間優勝し、総合で3位に入る大躍進を遂げました。その時のエース格のサストレとバッソの関係や、後に批判されたUSポスタルとの共闘戦略、過酷過ぎるレースでボロボロになる選手たち、悩みの絶えないリース監督、引退を決意するバルトリ、ファミリー同然のチームメイトとの生活、勝利に沸くチームカーの中、等々普段は観ることはできない映像がふんだんに収録されています。
そこいらの作品と違い本作が優れている点は、撮影隊が随行し舞台裏をカメラに収めるだけでなく、選手や監督やスタッフの言葉を丁寧に引き出している事。選手やスタッフ達はその時のリアルな心情を素直に語っており、ツール特有のキリキリした緊張感がダイレクトに伝わってきます。そして、彼等のような親密な関係を築くことができなければ、サイクルロードレースという過酷な世界を生き抜くことはできないだろう事も想像できてしまいます。
4年前の作品という事もありチーム員は今とは違っていますが、サストレ, フォイクト, ジューリック, アルベセンといった主力選手は今も在籍中です。その後、シュレック兄弟, カンチェッラーラ, オグレディといった強力な選手を得る事で現在の大成功を収めるのですが、同チームの選手の定着率の高さは特筆すべきものがありますね。それこそがこのチームの神髄であり、リース監督が最も大切にしている事なのでしょう。
その固い絆は家族以上のものがあるように見えますね。こんな所に一度でも所属してしまうと、二度と離れる事はできないんじゃないかってくらい。良いチームとはかくあるべきというお手本でしょう。
今年の覇者カルロス・サストレに注目してみると、なんて神経質で扱いづらい人間なんだというのが第一印象です。最初に本作を観た時と同じ印象で、その時も「あ、この選手は大成する事はないな」と思ってしまいました。始終仏頂面で、トレーニング方法も自分のやり方を曲げようとしない。そんな気難しいエースにさじを投げることもなく、理解し合おうと心を砕くリース監督を見ていると、こちらの胃まで痛くなってきます。
それから4年、名クラッシックを征する等の活躍はありましたが、本大会は彼等の集大成のようなレースだったに違いないでしょう。自分も、ここまでチーム力が勝利の推進力に繋がる様を目にするのは初めてのことです。来期からはチーム名が「サクソバンク」に変わりますが、このチームの結束力は変わることはないでしょう。
それでは、トレーラー(ドイツ語)をどうぞ。日本語版は公式サイトで。
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