技術系ロードバイク乗りのあれこれレビュー
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元クラバーにして現サイクリスト、Eガジェットフリークにしてecoピープル、イケメンにして非モテな♂がお送りします。
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この傑作を模倣と言うなかれ「明日、君がいない」

明日、君がいない / 2:37(2006年 オーストラリア)
監督・脚本:ムラーリ・K・タルリ
出演:テレサ・パルマー, ジョエル・マッケンジー, クレメンティーヌ・メラー, 他
公式サイト:http://www.kimigainai.com/
去年の公開時には、地味ながらも結構話題になった作品です。2006年カンヌの「ある視点」部門にも出品されています。遅ればせながらですが、DVDでフォローしました。
この完成度とメッセージ性の高さは、19歳の初監督作品という事を差し引いても破格のものがありますね。賛否両論あるのですが(後述)、これは傑作と言い切ってしまいましょう。ミステリータッチの作品なので、ネタバレにならない範囲でご紹介します。
舞台はオーストラリアの高校。原題の"2:37"は一人の生徒が自殺で命を絶ってしまう時刻で、物語はそこから始まります。誰が自殺したのかはその時点では明かされず、その日の朝から事件が起きるまでの半日の出来事を映し出していきます。登場人物はそれぞれ深刻な問題を抱えていて、誰が自殺してもおかしくないという緊迫した状況が描かれていきます。父親のプレッシャーによるストレス、ゲイである事を隠して生きる悩み、反対にゲイをカミングアウトした事による迫害、体の障害に起因するいじめ、といった十代のヒリヒリするようなリアルが映し出されていきます。命を絶ったのは誰なのか、そしてその理由は...、というお話です。
19歳の新人監督ムラーリ・K・タルリの実体験に基づく本作には、明確な答えは描かれていません。そして予想を裏切る結末は、観ている者を極度の混乱に陥れます。この混乱こそ、タルリ監督が親友の自殺で体験した事そのものなのでしょう。残された者の遣り切れなさが、これ程肌身で感じられる作品を観たのは初めてです。
映画作家としての技術も非常にハイレベルで、ガス・ヴァン・サントの傑作「エレファント」を思い起こさせるリフレインが多用されています。1つのシーンを複数の視点から捉えた映像を、時間軸を巧みに操りながら繋いでいく手法ですね。手持ちカメラによる長回し1カットは、リアリティを高めるとともに低く重く流れる苦難に満ちた時間の長さを際だたせます。
残念なのは、この表現手法をガス・ヴァン・サントのコピーと揶揄する人が少なくない事。撮影手法はあくまでも手段であって、それが似ているって事だけで模倣作と言うのはいかがなものか。その一点のネガティブ要素だけで、この素晴らしい脚本やほとんど素人の役者の迫真の演技やタルリ監督の演出には目を向けてもらえないの?そんな事いったら、この世の大半の表現は評価する価値のない模倣作なんじゃないの?そんな映画オタクによる鬼の首取った的な評論には耳を貸す必要はないでしょう。
本作がもたらす激しい心の痛みや、自殺の理由を理解するために何度も観返してしまった事は紛れもない事実なんですから。
感動の余り長くなってしまいましたが、是非多くの方に観ていただきたい傑作であります。英語版ですがトレーラーをどうぞ。日本語版は公式サイトにあります。
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