wigglin’ bloggin’: geek cyclist’s mubling

2006年ベスト邦画「ゆれる」

20071216-01.jpg

2006年、日本
監督・脚本:西川美和
出演:オダギリジョー, 香川照之, 伊武雅刀, 新井浩文, 真木よう子, 木村祐一, 他
公式サイト

公開時には観逃してたのですが、やっと観ることができました。
すでに最大級の評価を得ている作品ですが、確かにこれは全身鳥肌ものの衝撃作であります。

脚本・監督の西川美和をはじめ、オダギリジョー, 香川照之といった類い希な人材がいる限り、日本映画の未来はとても明るいと思った。
ハリウッド資本のチンケな作品に出演して偉ぶってる日本人俳優にも見せてやりたいですね。そして、どちらが映画としての本道なのか、小一時間ほど問い詰めてやりたいものですw。

東京で写真家として成功した猛(弟)が母の一周忌を機会に帰郷し、実家が営むガソリンスタンドを継いだ稔(兄)や父と数日を過ごす。
ある日、同じスタンドで働く幼なじみの智恵子を誘い、子供の頃に訪れた渓谷に足をのばすが、そこで智恵子が吊り橋から落下して死亡してしまう。
これをきっかけに、兄弟の闇の部分がお互いに牙をむき始め、思いもよらぬ衝撃の展開になだれ込んでゆく。というお話。

なんといっても脚本が実に見事なのです。香川照之をして「十年に一本の脚本」と言わしめる程。
田舎に残り地味な毎日に明け暮れる兄と、華やかな世界で成功を収めた弟の関係。智恵子に対する兄の密かな想いと弟の奔放で残酷な行動。
同様の関係性は父と叔父にも見られ、一方は田舎に残り、一方は東京で弁護士として活躍している。
この二組の兄弟が、二人の女性の死をめぐり、前後不覚になる程の振幅でゆれ動く。
仲の良さを演じる若い兄弟と、常に対立する老いた兄弟のコントラストも、兄弟の断絶の深さを際だたせています。

西川美和によるノベライズ本を併せて読めば、映画で描かれない部分も見えてきて、この物語に深みを与えることができるでしょう。登場人物が交互に語る形式をとっている点も、映画のサブテキストとして読むのに適していますね。

もうひとつの見所は、映画に愛された俳優オダギリジョーと、日本映画の屋台骨を支える俳優香川照之の、文字通り火花を散らすぶつかり合いです。
これはもう観てもらうしかないのですが、これ以上のキャストはあり得ないってくらいのはまり役です。
とにかく、温厚さ、臆病さ、凶暴さを変幻自在に演じ分ける香川照之の凄さが飛び抜けてます。ノベライズ本の智恵子の語りにある、

そして驢馬(ロバ)のような大きな瞳に、深い、深い闇が広がっていきました。その光る闇の中には、獣ような私の姿が映っていました。とうとう起こしてしまった、今まで誰も、決して開けたことのなかった重たい扉の鍵を、私が粉々にたたき壊してしまった。

という描写をこれほどリアルに演じる事ができる俳優は他にいないと思います。
いやいや、ホント凄いな。思い出すと震えてきます。

この作品がこれ程の強度で突き刺さったのは、自分がこの兄弟と同じ立場(兄弟が逆だけど)にあるからかもしれません。田舎に残り心を病んでしまった弟の事を思うと、罪悪感とともに背筋に冷たいものを感じてしまいます。
もう10年以上帰郷してませんが、この映画を観てますます帰れなくなってしまいました…。

それでは、心が揺さぶられるトレーラーをご覧ください。


【AD】

ゆれる ゆれる

ゆれる ゆれる

  • ご無沙汰しております.
    この作品の香川照之は,確かに,鬼気迫るものがありました.最近は,その演技力が認められてそこらじゅう引っ張りダコですね.他にそういう役者がいないのは,気になるところですが.この作品のオダギリジョーも,トッポ弟をなかなか好演していたと記憶しています.
    ただ残念なのは,この作品の終盤で延々と続く主人公のモノローグです.言葉で表現するのはズルイ,というか,少し馬鹿にされた気分になりました.映像で表現して欲しかったと思いつつ,映画館を出たのを今でも覚えています.

    ”ハリウッド資本のチンケな作品に出演して偉ぶってる日本人俳優にも見せてやりたいですね。そして、どちらが映画としての本道なのか、小一時間ほど問い詰めてやりたいものですw。”
    これには,全面的に賛成ですね(笑)

    以上,偉そうなことを書いて申し訳ない.

  • yanzさん、thanxです。
    ちょうど今観てるブレードランナーのファイナルカットでも、観慣れたナレーションが大きくカットされてました。自分はもうあの説明がすり込まれてますが、初めて観る人にはこのファイナルカットを薦めたいですね。
    映画の作り手は、もう少し観る者の想像力を信頼して解釈を任してしまう度量も必要ですよね。

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.